この記事を読む前に、まず数字を見てください。
| 知らなかった場合 | 介護保険を使った場合(1割負担) | |
|---|---|---|
| 入浴台・浴室手すり | 60,000円 | 約6,000円 |
| 住宅改修・手すり6本 | 25,000円+数日の作業 | 約2,500円 |
| 合計 | 85,000円+労力 | 約8,500円 |
※ここでは自己負担1割で計算しています。負担割合は所得により1〜3割と人によって変わります。ご自身の割合は介護保険負担割合証で確認できます。
知っているか知らないかだけで、これだけ差が出ます。本来なら介護保険を使えば合計8,500円ほどで済んだのに、それを知らず85,000円を払った。差額の約76,000円が、丸ごと損になった計算です。さらに、数日分の体力まで余分に使いました。
私がやらかした話|ネットで6万円分の福祉用具を買った
母が大腿骨骨折と背骨の圧迫骨折で歩行能力が落ち、在宅介護が始まりました。仕事も夜勤もある中で、毎日バタバタしながら目の前のことをこなすのが精一杯。制度を調べる余裕など、正直ありませんでした。
ケアマネの一言で、二重に損していたと気づいた
お風呂に入れなくなった母に、またお風呂に入れるようになってほしい。そう思い、入浴台と浴室手すりをネットで購入。合計6万円。その2週間後、ケアマネージャーに言われました。
「それ、介護保険を使えば1割負担で買えましたよ」
しかも、私が知らなかったのはそれだけではありませんでした。介護保険で福祉用具を購入するには、都道府県の指定を受けた事業者から買う必要があります。ネット通販や通信販売は、たとえまったく同じ商品でも給付の対象外なのです。
つまり私は「制度を知らずに定価で買った」だけでなく、「そもそも制度が使えない買い方をしていた」わけです。後から役所に申請しても、1円も戻ってきません。
手すりを自分で取り付けて、壁に穴を残した
さらに自宅の手すり6本も、業者の見積もりが高かったので自分で取り付けました。費用は25,000円に抑えられましたが、素人作業の限界はすぐに来ました。下地のない場所に穴を開けてしまい、壁がネジの効かない状態に。結局その穴はふさぐこともできず、今も残っています。


作業は何日もかかり、体力も気力もかなり消耗しました。後から知ったのですが、介護保険の住宅改修補助を使えば、業者に頼んでも自己負担約2,500円で済んだんです。きれいに仕上げてもらった上に、あの苦労もしなくて済んだ。知らないって、本当に損をします。
電気工事士として手を動かすのは得意なつもりでしたが、住宅の下地は別物でした。うまくいったDIYもあるので、そちらもよければ。

知らずに損をした2つの介護保険制度
①特定福祉用具販売|ネット購入が対象外になる理由
入浴台・浴室手すり・腰掛便座など、衛生上レンタルが難しい用具は購入費用を介護保険で補助してもらえます。年間上限10万円、1割負担なら自己負担は最大1万円です。
ただし、ここに私が引っかかった落とし穴があります。給付を受けられるのは、都道府県の指定を受けた事業者から購入した場合だけです。ネット通販や通信販売での購入は対象外。同じ商品でも、買う場所を間違えると全額自己負担になります。
なぜかというと、この制度は福祉用具専門相談員から直接アドバイスを受けて、本人の状態に合った用具を選ぶことが前提になっているからです。ネットではその助言が受けられないため、対象から外されているのです。
対象品目も決まっているので、買う前にケアマネージャーに確認するだけで大きな節約になります。
②住宅改修費補助|生涯20万円の枠と、工事前申請の落とし穴
手すりの取り付け・段差解消・滑り止めなど、自宅の改修費用に上限20万円まで補助が出ます。1割負担なら自己負担は最大2万円。業者に頼んでもこの金額で済みます。
ただし、この20万円には大事な前提があります。これは何度でも使える枠ではなく、原則として一人につき生涯で合計20万円までという総枠です。20万円の枠内であれば「今回は手すり、後日スロープ」というように複数回に分けて使えますが、合計が20万円を超えた分は全額自己負担になります。
例外として、要介護度が3段階以上重くなったときや、引っ越しをしたときは、あらためて20万円まで使えるようになります。とはいえ基本は「一生に一度の20万円」と考えて、どこを直すか優先順位をつけてから使うのがおすすめです。
もう一つ、この制度には申請のタイミングという落とし穴があります。申請は必ず工事前に行う必要があります。工事後に申請しても補助は受けられません。私のように先に工事を終わらせてしまうと、どれだけ後悔しても取り戻せません。
申請の手続き自体はケアマネージャーが書類を用意してくれます。自分で役所に行く必要はありません。ただし工事前に必ずケアマネージャーに一言相談することが条件です。「手すりをつけたい」と伝えるだけで動いてくれます。
介護保険の福祉用具、どこで買えば給付が受けられるのか
結論から言うと、都道府県の指定を受けた「特定福祉用具販売事業者」から買う必要があります。
具体的には、ケアマネージャーに「介護保険で買いたい」と伝えれば、指定事業者を紹介してもらえます。福祉用具のレンタル業者が販売も兼ねているケースが多く、そこで購入するのが一番確実です。
なぜネット通販がダメなのか。理由は、この制度が「福祉用具専門相談員から直接アドバイスを受けて、本人の身体状況に合った用具を選ぶこと」を前提にしているからです。ネットでは、その助言が受けられません。だから同じ商品でも、買う場所が違えば給付されないのです。
私が買った入浴台も浴室手すりも、指定事業者で買えば1割負担で済みました。商品は同じ。違ったのは、買った場所だけでした。
ちなみに、支払い方法にも2種類あります。いったん全額払って後から9割戻る「償還払い」と、最初から1割だけ払えばいい「受領委任払い」です。自治体によって扱いが違うので、ここもケアマネージャーに確認してください。
今すぐケアマネージャーに聞いてほしい3つのこと
まずこの3つを聞いてみてください。
「介護保険で購入できる福祉用具はありますか?」
「どこで買えば給付の対象になりますか?」
「住宅改修の補助制度は今の状態で使えますか?」
この3つを聞くだけで、数万円単位の出費を防げます。介護が始まったばかりの頃は何を聞けばいいかも分からないものですが、遠慮せずに聞いてください。それがケアマネージャーの仕事です。
まとめ|買う前・工事前の一言で、数万円が変わる
介護保険の制度は、知っている人だけが得をします。私のように介護が始まってからバタバタ動くと、知らないうちに損をしてしまいます。
この記事で伝えたかったことを最後にまとめます。
- 入浴台・浴室手すりは介護保険の特定福祉用具販売で購入できる(年間上限10万円・1割負担)
- ただし都道府県の指定事業者からの購入に限る。ネット通販は対象外
- 手すりの取り付けや段差解消は住宅改修費補助が使える(生涯上限20万円・1割負担)
- 住宅改修は工事前に申請が必須。工事後では補助が受けられない
- わからなければケアマネージャーに聞くだけでOK。書類は全部やってくれる
- 買う前・工事前に一言確認するだけで、数万円が変わる
忙しい介護生活の中で、使える制度は遠慮なく使ってください。
この記事は「介護が始まる前にやっておけばよかったこと」シリーズの2本目です。他の4つもあわせてどうぞ。

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