在宅リハビリが続かない一番の理由は「本人のモチベーション」
在宅でのリハビリは、続けること自体が本当に大変です。毎回毎回、同じことの繰り返し。付き添う家族も根気がいりますが、それ以上に苦労するのが「本人のモチベーションをどう保つか」でした。
この記事では、パーキンソン病の母のリハビリに付き添ってきた私が、やる気が落ちる原因と、実際に効果があった対応を、失敗も含めて正直にお伝えします。
この記事でわかること
- リハビリが続かない最大の原因は、本人と家族の「目的のズレ」であること
- ズレを合わせるための話し合いの進め方(聞くのが9割、話すのが1割)
- モチベーションを保つために効果があった3つの方法(褒め方・記録・主治医の一言)
先に結論から書くと、我が家で効いたのは「速く歩けるようにする」ことではなく、「今の暮らしを続けるために動く」という目的を母と共有し直したことでした。テクニックより先に、ここが噛み合っていないと何をやっても続きません。
リハビリのモチベーションが落ちる原因は本人と家族の「目的のズレ」
リハビリが続かない大きな原因のひとつが、本人と介助する家族とで、目的が微妙にズレていることだと私は感じています。
- 本人:歩ける距離やスピード、つまり「歩行能力そのものが上がっていく」ことをイメージしている
- 介助側:まずは今の歩行能力を「維持する」ことを目標にしている
このズレがあると、本人は「成長していない」と感じた瞬間に、極端にやる気を失ってしまいます。維持できているだけでも十分な成果なのに、本人の目線では「前と変わらない=意味がない」に見えてしまうのです。
パーキンソン病の母に「リハビリをやる意味あるの?」と言われた日
私の母もそうでした。
母の目標は、いつか一人で公園まで行って、自分でリハビリができるようになることでした。
けれど、1年、2年と経ってもなかなか辿り着けません。そのことを考え出すと急にやる気がなくなり、あるとき母はこう言いました。
「やってもやっても、まともに歩ける様にならないなら、やる意味あるの?」
「希望を持ってやってきたけど、全然良くならないから本当に悲しい」
そう言って、一時期は公園でのリハビリに2ヶ月ほど行かなくなってしまいました。
最初にやったのは目的のズレを合わせる話し合い【聞くのが9割】
ここで私が最初にやったのは、話し合って、お互いのリハビリの目的を一致させることでした。
否定せず、まず全部聞く
まずは母が「リハビリでどうなりたいのか」を、すべて聞くことから始めました。
このとき大切なのは、絶対に否定しないこと。すべてを受け入れることです。母に「自分の思いをちゃんと聞いてくれる、わかってくれている」と感じてもらうためです。ここがないと、こちらの思いも相手には届きません。
割合でいうと、聞くのが9割、話すのは1割。母の心にそっと耳を傾けると、こんな思いを話してくれました。
- あくまでも、一人で外に出て少しでも散歩できるようになりたいこと
- その思いとは裏腹に、なかなか向上しない歩行能力に、自分でも愕然としていること
- 考えれば考えるほど、気持ちが下向きになってしまうこと
「そうだよね、そうだよね」と寄り添いながら、ただ聞くことだけに専念しました。
全部吐き出してもらってから、自分の思いを伝える
母が心のうちを全部吐き出したあとで、私は自分の思いを伝えました。
私は母に、どんな形であれ、最後の瞬間まで家で過ごしてほしいと思っています。多少歩けなくてもいい。健康でいてくれて、当たり前にご飯を食べて、当たり前にテレビを見て、当たり前に笑う——そんな日々が1日でも長く続いてほしい。その気持ちを、優しく伝えました。
自分を大切に思ってくれていることを言葉にして伝えたことで、母は「まあ、また頑張るか」と一言もらしてくれました。リハビリの本当の目的は「速く歩けるようになること」ではなく「この暮らしを続けること」なんだと、二人で確認できた瞬間でした。
介護のリハビリでモチベーションを上げる方法3つ
目的を合わせたうえで、私が続けたのが次の3つです。
1. 結果ではなく『行動』を褒める
正直に告白すると、私は身内を褒めるのがとても苦手です。会社の後輩や知人はいくらでも褒められるのに、身内となると言葉が出てこない。
理由を考えてみると、私自身、母から褒められた記憶があまりないことも関係している気がします。さらに日々の介護に余裕がないと、どうしてもイライラして態度に出てしまう。
母は、思うように歩行能力が改善しないことでただでさえ落ち込んでいるのに、私がイライラするとそれを敏感に感じ取り、さらにやる気を失ってしまう——という悪循環でした。当時の私は、母の気持ちを理解できていませんでした。今振り返ると、本当に申し訳ない思いです。
だからこそ意識して変えたのが「結果ではなく行動を褒める」ことです。歩行能力そのものは急には変わりません。でも「今日も来られたね」「昨日より少し歩けたね」「今日は表情がいいね」——そんな小さな事実なら、毎日必ず褒める材料が見つかります。
2. 歩いた距離・時間をウォッチやアプリで記録する
もうひとつが記録することです。我が家ではGARMIN(ガーミン)のウォッチを使いました。
記録は誰にとっても効果があると思います。やっている感が出るし、可視化することで「自分はこんなに頑張っている」とわかり、自己肯定感が上がるからです。
母も同じでした。最初はなんとも思っていなかったのに、記録し始めて3ヶ月ほど経つ頃、たまたま時計を忘れると「え〜」とすごく残念がるように。リハビリを終わろうと声をかけても、ガーミンの距離を見て「もう少しで300メートルになるから」と、自分で考えながらリハビリをするようになりました。
やる気が出ない日も、記録を一緒に見返します。「先月はこんなに歩いたんだね!」「この日は涼しかったからか、時間のわりに距離が伸びてるね」——そう褒めながら話すと、少し笑顔になり、不思議とモチベーションが回復していきます。頑張っていることを可視化する大切さを学びました。
ガーミンでなくても、スマホの歩数計アプリや手書きのノートでも構いません。大事なのは「毎回残して、あとで振り返れる形にする」ことです。
3. 主治医からリハビリの意味を伝えてもらう
3つ目は、通院先の先生から、リハビリの大切さを本人に伝えてもらうことです。
私は神経内科の先生に、母のモチベーションが上がらないことを正直に相談しました。すると先生は、強い口調でこう言ってくれました。
「苦しくても、とにかく体を動かすこと。そうしなければ、今楽しめている生活が成り立たなくなる。今の年齢、パーキンソン病のことを考えると、生活の質を維持するためにとにかく動いてください。歩けなくても、太陽を浴びてください。せっかくの良い生活リズムが狂ってしまいます」
やはりプロが伝えると、本人の受け止め方がまるで違います。私が言うより真剣に受け入れ、目にも力がこもっていました。家族の言葉だけで届かないときは、主治医やリハビリの専門職、ケアマネジャーなど「第三者の専門家」の力を借りるのも有効だと感じます。
まとめ|リハビリが続かないときは「目的」を合わせ直す
生活の質(QOL)を保つために体を動かすことは、とても重要です。介護する側も日々大変ですが、感情に任せて行動や発言をしていると、介護される側も、する側も、良くない方向へ進んでしまいます。
私が大切だと感じたのは、次の点でした。
- 目的のズレを話し合いで合わせる——否定せず、聞くのが9割
- 結果ではなく行動を褒める——小さな前進を毎日見つける
- 記録して振り返る——数字が自己肯定感を支えてくれる
- 専門家の力を借りる——主治医の一言が本人を動かす
ときに寄り添い、ときに客観的な立場から話す。そのバランスが大切だと感じています。生活の質を落とさないため、そして生きていくために、工夫しながらこれからも母に寄り添っていきたいと思います。
パーキンソン病の介護で私がやってきたこと全般は、こちらにまとめています。↓


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