所定外労働の制限とは、要介護の家族を持つ人が申請すると、会社が残業をさせられなくなる制度です(育児・介護休業法)。申請回数に制限はありません。
最初に、はっきり言わせてください。
この制度がなければ、私はとっくに仕事を辞めていたと思います。
夜勤をしながら、母をひとりで介護する。その生活を今もなんとか続けられているのは、ある制度のおかげです。「時間外労働の制限」——介護を理由に、残業を制限してもらえる制度です。
大げさではなく、私にとっては生命線です。今日は、この制度に救われた話を、正直に書きます。
勤務表が、怖かった
申請する前の話をさせてください。
私の職場は交代勤務で、人手不足が常態化しています。勤務表が発表されると、まずそれを見るのが怖かった。
指定された残業が20時間以上入っている月を見ると、心の中でこうつぶやくんです。「今月も乗り切れるだろうか」「体が持つだろうか」と。
もっとこたえたのは、予定が崩れることでした。明けの日に母の病院を入れていたのに、そこに残業が入っている。勤務表を見た瞬間、「やばい、すぐ病院に連絡して変更してもらわなきゃ」と焦って、変更の電話を入れる。これが毎月のように起きました。
病院、リハビリ、その他いろいろな予定が、残業のせいで後手後手になっていく。そのたびに、心の余裕が少しずつ削られていきました。勤務発表の前は、いつも、なんともいえない気持ちでした。
「このままで、続けられるのかな」——そう感じ始めたのが、制度を調べ始めたきっかけです。
残業を制限する制度は、2種類ある
調べていくと、介護を理由に残業を制限する制度には、実は2つあることが分かりました。ここは混同しやすいので、整理しておきます。
① 所定外労働の制限(残業免除)
要介護状態の家族を介護する人が申請すると、会社は残業をさせられなくなります。「免除」なので、残業はゼロ。1分でも所定の時間を超えて働かせることができなくなる制度です。
② 時間外労働の制限
こちらは残業をゼロにするのではなく、月24時間・年150時間を超える残業をさせられなくする制度です。残業を完全になくすのではなく、上限を設けるイメージです。
そして、私がこの2つを知ったとき、本当に一筋の光が見えた理由があります。
どちらも、申請回数に制限がないんです。
それまで私が調べてきた制度は、ほとんどが回数や日数に上限がありました。介護休業は通算93日、介護休暇は年5日。どれも「使えば、その分だけ減っていく」ものでした。いつ終わるか分からない介護の中で、減っていく制度は、どこか心細い。
でも、この残業を制限する制度は違いました。何度でも申請できる。尽きない。いつ終わるか分からない介護だからこそ、「尽きないお守り」がひとつあるというだけで、こんなに心強いものはありませんでした。
さらに、私のように夜勤がある人間には、もうひとつ味方があります。深夜業の制限といって、深夜の勤務を免除してもらう制度です。これも回数無制限。夜勤がきつい人にとっては、本当に頼もしい仕組みです。
私が「残業ゼロ」を選ばなかった理由
ここで、正直に書いておきたいことがあります。
私が会社に申請しているのは、残業をゼロにする「所定外労働の制限」ではなく、上限を設ける「時間外労働の制限」のほうです。
「ゼロにできるなら、ゼロにすればいいのに」と思うかもしれません。でも私は、あえてそうしませんでした。理由が2つあります。
ひとつは、緊急のときには、自分も対応したいからです。
駅員の仕事では、事故対応や急病人の対応が、ちょうど勤務が明ける時間帯に起きることがあります。たいていは30分か1時間で終わる、短い対応です。もし残業ゼロの制度を使っていたら、こういう短時間の対応すら、できなくなってしまう。
それを全部、仲間に任せることもできます。でも、日頃から指定された残業で、みんなも残業が多くなっている。月末なんかは、同僚も残業が重なって、みんな疲労困憊していることがあります。誰かが体調を崩して早退しなければならないこともある。そんな厳しいときくらいは、自分も対応したい。その気持ちが、どうしてもありました。
もうひとつは、その姿勢を会社に伝えたかったからです。「介護はするけれど、仕事から完全に手を引きたいわけじゃない。緊急時には動きます」。そう示すことで、会社や組織から「介護をしている人」として、きちんと認知してもらえました。
結果として、基本的に指定された残業はなくしてもらえて、介護を優先できる環境になりました。残業をゼロにする権利を主張するのではなく、「働く意志を見せながら、必要な分だけ守ってもらう」。私には、この形が合っていました。
申請して、霧が晴れた日
制度を申請して、初めて勤務表が発表された日のことは、今でも覚えています。
勤務表を見て、指定された残業が、入っていない。
明けで行く病院の変更をしなくていい。明けのリハビリの予定が、崩れない。
それだけのことで、本当に私の心は救われました。あの、毎月のなんともいえない不安の霧が、一気に晴れたんです。
申請してから数ヶ月が過ぎたある日。なんの心配もせずに、母のリハビリに公園で付き添っている瞬間がありました。病院に、落ち着いて付き添えている瞬間がありました。そのとき、心から思いました。
「ほんとうに、ありがたい」と。
制度があると知っただけでも心に余裕が生まれますが、実際に使ってみて、生活そのものが変わりました。私が今、この制度に感謝しているのは、こういう一つひとつの瞬間を取り戻せたからです。
「要介護1だから無理かも」と思っていませんか
ここで、申請を諦めかけている人に伝えたいことがあります。
「うちの親は要介護1だから、無理かもしれない」。私も、最初はそう思っていました。
でも実際には、担当の医師に「本人に介護が必要である」という書面を書いてもらう方法があります。内容はこういったものです。
- 一人で生活することが難しい
- 生活の中で介護が必要な場面がある
- 一人で外出することができない
医師がいくつかの質問に「はい・いいえ」で答える形式で、要支援レベルでも該当する可能性は十分あります。介護度だけで判断して、「うちは軽度だから」と諦めないでください。まずは担当医師に相談してみてください。
申請の手順
私が実際にやった流れを書いておきます。
① 制度を確認する
自分が使いたいのが「残業ゼロ(所定外労働の制限)」なのか、「上限を設ける(時間外労働の制限)」なのか、夜勤も外したいなら「深夜業の制限」も。自分の状況に合うものを選びます。
② 会社の労務担当に問い合わせる
上司に相談しても、この制度を知っている人はほとんどいませんでした。私の場合は、労務管理の部署に直接電話して、申請書を提出しました。職場に詳しい人がいなくても、労務担当に直接聞くのが一番早いです。
③ 必要な書類を出す
申請書(請求書)と、要介護状態を確認できる書類が必要です。要介護認定を受けていればその証明、軽度の場合は前述の医師の書面などです。
④ 申請が通れば、次の勤務から反映される
私の場合は、提出してから次の勤務表に反映されました。
制度は、知っているだけでは何も変わりません。一歩踏み出して申請することで、初めて生活が変わります。
介護をしている、あなたへ
この制度を使い始めてから、気持ちが本当に楽になりました。正直、今の私にとっては、なくてはならない制度です。
申請をためらっている方も、いるかもしれません。迷惑をかけるんじゃないか、特別扱いを求めているように見えないか。その気持ちは、痛いほど分かります。私も同じでした。
でも、どうか覚えておいてください。
仕事は、他の人でもできます。でも、あなたの家族を介護できるのは、あなただけです。
いつ終わるかわからない介護だからこそ、使える制度は遠慮なく使っていい。回数の制限もありません。何度でも、あなたを守ってくれます。
この制度の存在が、一人でも多くの人に届きますように。今日も仕事と介護を頑張っているあなたに、伝えたいです。
一人で、頑張らないでください。
最後まで読んでくれて、ありがとうございます。
残業の制限は、仕事と介護を両立するための制度のひとつです。ほかにどんな制度があるか、全体像を一枚にまとめた記事も用意しています。あわせて読んでみてください。


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