介護離職する前に|仕事を辞めずに使える制度と、夜勤介護7年の現実

「辞める前に読んでほしい|分かれ道に立つ介護者のイラスト」

「介護のために、仕事を辞めるしかないのかな」

もしそう思って検索してここにたどり着いたなら、先に結論を言わせてください。**多くの場合、辞めなくて大丈夫です。**辞める前に使える制度が、ちゃんとあります。

私は東京で駅員をしながら、夜勤もシフト勤務もある中で、母をひとりで7年間介護してきました。世の中の「仕事と介護の両立」の話は、たいてい平日の昼間に働いている人を前提にしています。でも私のように夜勤がある人間にとっては、その前提からして当てはまらない。だから自分で調べて、使えるものは使って、なんとか辞めずにここまで来ました。

この記事は、その「使える制度」を一枚の地図にまとめたものです。一つひとつの制度の細かい使い方は個別の記事に分けてあるので、ここではまず全体像をつかんでください。どこから手をつければいいか、それが見えるだけでも、気持ちはずいぶん楽になります。

ひとつだけ先に言っておきたいことがあります。私は最初の3年間、制度を一つも使えませんでした。知らなかったからではありません。知っていても、職場に言い出せなかったからです。同じ後悔をしてほしくなくて、この記事を書いています。

目次

介護離職は「最後の手段」|まず制度を知ってほしい

介護のために会社を辞める。これは一見、家族のための優しい決断に見えます。でも現実は、そんなにきれいな話ではありません。

仕事を辞めれば収入は止まります。介護はいつ終わるか誰にも分かりません。そして一度離れた職場に、同じ条件で戻るのは簡単ではない。介護が一段落したときに、自分の生活が立ち行かなくなっていた、という話は珍しくないんです。

私自身、何度も「辞めたほうが楽なんじゃないか」と思いました。今の夜勤は、朝から翌日の朝までの24時間勤務です。明けたその日に家事を片付けて、ようやく仮眠を取る。そして翌朝には、また次の夜勤が始まる。休まる時間は、ほとんどありません。

夜勤中に異常が起きて、仮眠がほとんど取れない日もあります。そんな体で、母の通院に付き添う。通院は、移動と病院での待ち時間を合わせて2時間ほどかかる。体調が悪いと、車の運転すら辛い。

何より嫌なのは、疲れていると自分が不機嫌になってしまうことです。母に優しくできない自分が、本当に嫌になる。そういう日が続けば、誰だって「辞めたほうが楽だ」と思います。それでも辞めなかったのは、辞めたあとの生活が想像できなかったからです。そして、辞めなくても使える制度があると、後から知ったからです。

頑張りすぎないでください。でも、辞めるという一番大きな決断をする前に、まずどんな制度があるのかだけ、知っておいてほしいんです。

あなたはどれ?仕事と介護の制度・早見表

制度の名前から入ると、かえって分かりにくい。だから「今のあなたの状況」から引けるようにしました。自分に近い行を見つけて、そこからそのまま読み進めてください。

こんな状況なら使えるのはこれまず何をする
まとまった期間、介護に向き合う必要がある介護休業(通算93日)会社に2週間前までに申し出る
来週の通院に付き添いたい、急な対応がある介護休暇(年5日)当日でも申請できる。まず上司に一言
毎日の残業がきつい、生活リズムを守りたい所定外労働の制限(残業免除)会社に申請書を出す
休みたいけど収入が不安介護休業給付金(賃金の約67%)介護休業とセットで考える
シフト・夜勤で、そもそも制度が使いにくい職場との交渉この後の「職場とどう交渉するか」を読んでほしい

迷ったら、まず一番上から見てください。大きく分けると「休む」「働き方を変える」「お金」の3方向です。詳しい使い方は、各項目からリンクした個別の記事にまとめています。

仕事と介護で使える制度を1つずつ解説

「休む」制度:介護休業と介護休暇はどう違う?

介護で「休む」制度には、性格の違う2つがあります。

介護休業は、対象家族ひとりにつき通算93日まで取れる、まとまった長期の休みです。すぐに復帰する前提ではなく、介護の体制を整えるための時間と考えると分かりやすい。一方の介護休暇は、1年に5日(対象が2人なら10日)取れる単発の休みで、通院の付き添いや急な対応にあてるものです。

ざっくり言えば、介護休業は「腰を据えて体制をつくる長い休み」、介護休暇は「ちょこちょこ使える短い休み」。この2つは名前が似ていて混同しやすいので、違いだけは押さえておいてください。

私が実際に、夜勤シフトの中で介護休暇を申請したときの話は、この記事にまとめています。よければ、こちらも読んでみてください。

「働き方を変える」制度:残業免除・所定外労働の制限

休むだけが両立の手段ではありません。働き方そのものを軽くする制度もあります。

それが所定外労働の制限、いわゆる残業免除です。介護を理由に申請すれば、会社は原則として残業をさせられなくなります。毎日の生活リズムを守りたい人には、休業よりこちらのほうが現実的なことも多い。

特にシフトや夜勤がある働き方だと、この制度の使い勝手は職場によってかなり変わります。そのあたりのリアルは、私の実体験を別記事にまとめてあります。

なお、2025年10月の法改正で、介護をする労働者向けのテレワーク導入が会社の努力義務になりました。まだ「義務」ではなく「努力義務」なので職場次第ですが、こういう追い風も少しずつ増えています。使える環境なら、相談してみる価値はあります。

残業免除を申請するとき、何をどう伝えればいいのか。私が実際に動いたときの手順は、この記事で具体的に書いています。

「お金」の制度:介護休業給付金

「休めるのは分かった。でも、休んだら給料はどうなるの?」

ここで効いてくるのが介護休業給付金です。介護休業を取っている間、雇用保険から賃金の約67%が支給されます。しかもこの給付金は非課税なので、額面がほぼそのまま手取りになります。無給で休むのと、給付金が出るのとでは、決断のしやすさが全然違います。

ただし、知らないと困る注意点が2つあります。

ひとつは、お金が入るのは休業中ではなく、休業が終わったあとだということ。介護休業給付金は後払いです。だから休んでいる間の生活費は、別に用意しておく必要があります。「休めばすぐお金が入る」と思っていると、その間の家計が回らなくなります。

もうひとつは、上限があること。収入が高い人の場合、賃金の67%がまるまる出るわけではなく、頭打ちになることがあります。

ちなみに私自身は、この給付金をまだ使っていません。それでも「知っているだけで救われた」という話を、別記事に正直に書きました。

制度より難しい「職場とどう交渉するか」問題

ここからが、正直、一番伝えたいところです。

制度の存在を知ることと、それを職場で実際に使うことの間には、大きな谷があります。「介護があるので休みます」「残業はできません」。この一言が、どうしても言い出せない。私自身、母の介護が始まってから3年間、職場にずっと言えませんでした。

忘れられない時期があります。一時的に人手が足りなくなって、指定された残業が月20時間ほど入ったことがありました。しかもそれは、私だけじゃない。ほぼ全員に残業が入っていて、みんなすでにギリギリだった。

そんな中で、自分が休みを取るために、その疲れ切った仲間に「残業を代わってほしい」と頼む。どうしてもそれができませんでした。「お願いできない」——この一言を、何度も心にしまいました。

迷惑をかけている、という思いだけが積もっていく。そのうち、自分がこれまで積んできたはずの信頼にも自信が持てなくなって、仲間に意見ひとつ言えなくなっていました。制度がどうこう以前に、人に頼ること自体ができなくなっていたんです。

さらに、私のようにシフトや夜勤がある働き方だと、もう一段やっかいです。ここまで紹介してきた制度は、どれも「日勤で平日に働く人」を前提に作られています。シフトが固定されないと通院の予約すら決められないし、介護休暇を1日取るだけでもシフトの組み直しが発生して、現場に気をつかう。制度上は使えるはずなのに、現場では使いにくい。この矛盾に、何度もぶつかってきました。

それでも、あるとき意を決して、上司に相談しました。結論から言うと、動いてよかったです。シフトをある程度固定してもらえて、残業も減りました。全部が解決したわけではないけれど、何も言わなかった頃よりは、確実に楽になりました。

制度は、知っているだけでは自分を守ってくれません。使うには、職場に伝えて、ときに交渉することが要る。そこが本当の山場です。私が実際にどう切り出して、何が変わって、何は変わらなかったか。きれいごとなしに、全部この記事に書きました。

「言い出したいけど言い出せない」まま1年以上悩んだ私が、どう交渉して、シフトを固定してもらえたか。その手順と結果を、正直にまとめています。

まとめ|辞める前に、まずこの順番で動いてほしい

仕事と介護の両立は、根性でどうにかするものではありません。使える制度を、順番に使っていくことです。最後に、動く順番だけまとめておきます。

  1. まず情報を集める:どんな制度があるか、この記事の早見表で全体像をつかむ
  2. 次に職場に相談する:制度を使う前に、まず一言伝える。ここが一番の山場
  3. そして制度を申請する:介護休業・介護休暇・残業免除・給付金を、状況に応じて使う

この順番で動けば、「いきなり辞める」以外の選択肢が、必ず見えてきます。

介護は長期戦です。頑張りすぎないでください。あなたが倒れてしまったら、介護そのものが続けられなくなります。自分を守るための制度は、遠慮なく使っていい。それだけは、7年やってきた私から伝えておきたいことです。

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