私はもともと、人に弱みを見せるのが苦手です。
大切な人にさえ、すべてをさらけ出すことに躊躇してしまう。たぶん、傷つくのが怖いんだと思います。
だから介護のことも、しばらくは誰にも言えませんでした。会社の同僚にも、友人にも。ただ一人で抱え込んで、「自分でなんとかしてみせる」と思っていた。
あの頃の自分に言ってやりたい。それ、けっこうしんどいよ、と。
職場での「夜勤のやりっこ」が、崩れていった
私の職場は夜勤があります。
そして暗黙のルールがある。夜勤を代わってもらったら、今度は自分が代わってあげる。いわゆる「夜勤のやりっこ」です。
最初はそれでうまくいっていました。でも介護が本格化してくると、通院の予約が増え、シフトとぶつかることが増えていった。一年に一、二回なら何とかなる。でもそれが三回、四回と続くようになると、代わってもらうばかりで、代わってあげられない状況になっていきました。
「あの人、自分が頼む時だけ来て、こっちが頼むと断るよね」
そんなことを陰で言われるようになったのは、二年ほど経った頃です。職場で少しずつ浮いていく感覚がありました。仕事がどんどんやりづらくなっていった。
これが限界でした。
打ち明けるまでの、あの苦痛
話すことにしたのは、もうこのままではダメだと思ったからです。
でも、簡単ではありませんでした。話している途中でも、「申し訳ない」という気持ちが湧いてくる。相手の顔色が気になる。弱みをさらけ出すのが苦手な自分には、介護していることを打ち明けるのは、正直とても苦痛でした。
なぜ苦痛なのか。たぶん、かわいそうと思われるのが嫌だったんだと思います。同情の目で見られたくなかった。
それでも少しずつ、タイミングを見ながら、一人ひとりに話していきました。
私が実際にやった、話し方
打ち明けると言っても、最初から全部話す必要はありません。
私がやったのは、まず一言だけ。
「実は今、母の介護をしてるんだよね」
それだけです。あとは相手の様子を見ます。
「そうなんですね」と、どこか素っ気ない反応の人には、それ以上踏み込まない。ただ最後にひとこと添えました。「夜勤のことで迷惑をかける時があるかもしれないので、その時はよろしくお願いします」と。それだけです。
逆に「いつからですか?」「それは大変ですね」と、少しでも関心を向けてくれた人には、もう少し今の状況を話しました。
全員に同じ話をしようとしなくていい。相手の反応に合わせて、話す量を変える。それだけで、あの苦痛はずいぶん和らぎました。
三ヶ月ほどかけて、職場のほとんどの同僚に伝え終わった頃。不思議と、最初のあの苦痛はほとんどなくなっていました。
話してみて、変わったこと
正直、ここまで変わるとは思っていませんでした。
まず、心が軽くなりました。これは本当に、予想以上でした。抱え込んでいたものを全部出したら、それだけでずいぶん楽になった。
そして職場の空気が変わった。
あまり話したことがなかった同僚が、「実は自分もそういう悩みがあって、あなたが話してくれたから言えた」と打ち明けてくれました。親の介護が心配だと話してくれた人もいた。ずっと冷たい人だと思っていた上司が、「こういう制度があるよ」と教えてくれたりもした。
こちらが心の扉を開けたら、相手も開けてくれた。そんな体験を、いくつもしました。
ひとつだけ、寂しかったこと
いいことばかりではありませんでした。
介護していることを話す前は、仕事終わりに食事や飲みに誘われることが多かった。そのたびにお断りしていたのですが、みんなに話してからは、ほとんど誘われなくなりました。
断らなくて済むのは楽です。でも、やっぱり少し寂しい。
気を遣ってくれているのはわかる。でもそれが「遠ざけられた」ように感じてしまう瞬間もあります。これは正直な気持ちとして、書いておきたかった。
まとめ
介護していることを職場で打ち明けることは、勇気がいります。かわいそうと思われたくない、仕事に支障が出るのが怖い、弱みを見せたくない。そういう気持ち、よくわかります。
でも私の経験では、デメリットよりメリットの方が、はるかに大きかった。
抱え込むのをやめたら、心が軽くなった。話したことで、思わぬところで人間関係が深まった。職場での居心地も、以前より良くなりました。
完璧に理解してもらえるとは限らない。全員が優しくしてくれるわけでもない。それでも、一人で抱えたままよりずっといい。
もし今、誰にも言えずに抱え込んでいるなら。一人でいいので、話してみてほしいと思います。
私はこの「抱え込むのをやめた」ことも含めて、介護を続けるためにいろんなことを手放してきました。その全部をまとめた記事があります。

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